口腔管理体制強化加算(口管強)とは
口管強は生涯を通じた口腔機能の管理を評価する加算
「口腔管理体制強化加算(口管強)とは、乳幼児期から高齢期までのライフコースを通した継続的・定期的な口腔管理によって、歯科疾患の重症化予防に取り組んでいる歯科医院を評価する加算制度です。2024年度(令和6年度)の歯科診療報酬改定において、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)から名称変更され、施設基準等も見直されました。
名称見直しの理由には、患者にとっての「かかりつけ歯科医」のイメージと「か強診」の制度にはギャップがあり、役割が分かりにくいという声があったことが挙げられます。また、「ライフコースに応じた口腔管理」としながら、小児に関する算定実績・研修は施設基準に含まれていなかったことからも見直しとなりました。
なお名称が変わり、か強診は廃止となるものの、歯科医院にかかりつけ歯科医の役割が求められていること自体は、今後も変わりません。
そもそも「かかりつけ歯科医」とは
かかりつけ歯科医とは、「安全・安心な歯科医療の提供のみならず医療・介護に係る幅広い知識と見識を備え、地域住民の生涯に亘る口腔機能の維持・向上をめざし、地域医療の一翼を担う者としてその責任を果たすことができる歯科医師(※)」のことを指します。
※日本歯科医師会|かかりつけ歯科医について(日本歯科医師会の考え方)より引用(最終アクセス:2024年7月24日)
むし歯治療のみならずニーズが多様化する歯科医療において、かかりつけ歯科医は患者の既往歴や家族背景を把握し、全身の状態を踏まえた歯科治療・歯科保健指導を求められています。いつでも、なんでも相談できる身近なかかりつけ歯科医がいることは、患者の口腔の健康維持だけでなく、健康寿命を伸ばすことにもつながるでしょう。
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口腔管理体制強化加算(口管強)を算定するには
口管強の施設基準を満たす
口腔管理体制強化加算(口管強)を算定するには、厚生労働省が定める施設基準をすべて満たす必要があります。なお、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)よりも項目が増加しているため、変更点(以下表、赤字部分)に注意しましょう。
項目 | 内容 |
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(1) | 歯科医師が複数名配置されていること又は歯科医師及び歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置されていること。 |
(2) | 次のいずれにも該当すること。 ア 過去1年間に歯周病安定期治療又は歯周病重症化予防治療をあわせて30回以上算定していること。 イ 過去1年間にエナメル質初期う蝕管理料又は根面う蝕管理料をあわせて12回以上算定していること。 ウ 歯科点数表の初診料の注1に規定する施設基準を届け出ていること。 エ 在宅療養支援歯科診療所1又は2の施設基準に係る届出を行っていない診療所にあっては、歯科訪問診療料の注15に規定する届出を行っていること。 |
(3) | 過去1年間に歯科疾患管理料(口腔機能発達不全症又は口腔機能低下症の管理を行う場合に限る。)、歯科衛生実地指導 口腔機能指導加算、小児口腔機能管理料、口腔機能管理料又は歯科口腔リハビリテーション料3をあわせて12回以上算定していること。 |
(4) | 以下のいずれかに該当すること。 ア 過去1年間の歯科訪問診療1、歯科訪問診療2若しくは歯科訪問診療3の算定回数又は連携する在宅療養支援歯科診療所1、在宅療養支援歯科診療所2若しくは在宅療養支援歯科病院に依頼した歯科訪問診療の回数があわせて5回以上であること。 イ 連携する歯科訪問診療を行う別の医療機関や地域の在宅医療の相談窓口とあらかじめ協議し、歯科訪問診療に係る十分な体制が確保されていること。 |
(5) | 過去1年間の診療情報提供料又は診療情報等連携共有料があわせて5回以上算定している実績があること。 |
(6) | 当該医療機関に、歯科疾患の重症化予防に資する継続管理(エナメル質初期う蝕管理、根面う蝕管理及び口腔機能の管理を含むものであること。)、高齢者並びに小児の心身の特性及び緊急時対応に関する適切な研修を修了した歯科医師が1名以上在籍していること。なお、既に受講した研修が要件の一部を満たしている場合には、不足する要件を補足する研修を受講することでも差し支えない。 |
(7) | 診療における偶発症等緊急時に円滑な対応ができるよう、別の保険医療機関との事前の連携体制が確保されていること。ただし、医科歯科併設の診療所にあっては、当該保険医療機関の医科診療科との連携体制が確保されている場合は、この限りではない。 |
(8) | 当該診療所において歯科訪問診療を行う患者に対し、迅速に歯科訪問診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、当該担当医名、診療可能日、緊急時の注意事項等について、事前に患者又は家族に対して説明の上、文書により提供していること。 |
(9) | (5)に掲げる歯科医師が、以下の項目のうち、3つ以上に該当すること。 ア 過去1年間に、居宅療養管理指導を提供した実績があること。 イ 地域ケア会議に年1回以上出席していること。 ウ 介護認定審査会の委員の経験を有すること。 エ 年1回以上、在宅医療に関するサービス担当者会議や病院・診療所・介護保険施設等が開催する多職種連携に係る会議等に年1回以上出席していること。 オ 過去1年間に、 在宅歯科栄養サポートチーム等連携指導料を算定した実績があること。 カ 在宅医療又は介護に関する研修を受講していること。 キ 過去1年間に、退院時共同指導料1、 在宅歯科医療連携加算1、在宅歯科医療連携加算2、在宅歯科医療情報連携加算、小児在宅歯科医療連携加算1、小児在宅歯科医療連携加算2、退院前在宅療養指導管理料、在宅患者連携指導料又は在宅患者緊急時等カンファレンス料を算定した実績があること。 ク 認知症対応力向上研修等、認知症に関する研修を受講していること。 ケ 過去1年間に福祉型障害児入所施設、医療型障害児入所施設、介護老人福祉施設又は介護老人保健施設における定期的な歯科健診に協力していること。 コ 自治体が実施する事業(ケに該当するものを除く。)に協力していること。 サ 学校歯科医等に就任していること。 シ 過去1年間に、歯科診療特別対応加算1、歯科診療特別対応加算2又は歯科診療特別対応加算3を算定した実績があること。 |
(10) | 歯科用吸引装置により、歯科ユニット毎に歯の切削や義歯の調整、歯冠補綴物の調整時等に飛散する細やかな物質を吸引できる環境を確保していること。 |
(11) | 患者にとって安心で安全な歯科医療環境の提供を行うにつき次の十分な装置・器具等を有していること。 ア 自動体外式除細動器(AED) イ 経皮的動脈血酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター) ウ 酸素供給装置 エ 血圧計 オ 救急蘇生セット カ 歯科用吸引装置 なお、自動体外式除細動器(AED)については保有していることがわかる院内掲示を行っていることが望ましい。 |
厚生労働省|令和6年度診療報酬改定の概要【歯科】より引用 ※太字・赤字を加工(最終アクセス:2024年7月24日)
なお2025年5月 31 日までのあいだ、か強診届出済の歯科医院は以下項目において、2024年5月31日以前(改定前)と2024年6月1日以降(改定後)の算定回数を合算して問題ありません。
地方厚生局に口管強の届出をする
以下書類を郵送にて、地方厚生局へ1部ずつ提出しましょう。
上記リンクは関東信越厚生局が公開しているPDFです。書類様式は各地方厚生局のサイトより入手可能ですので、ご確認ください。
口管強の経過措置・再届出について
か強診届出済の歯科医院は経過措置として、2025年5月31日までのあいだに限り、以下施設基準の項目を満たしているものとみなされるため、口管強の届け出は不要です。
一方で、2025年6月以降にも口管強を算定したい場合は、2025年5月末までに追加された要件を満たし、書類の再届出が必要となるため注意しましょう。
口腔管理体制強化加算(口管強)を取るメリット・デメリット
口管強の最大のメリットは売上拡大
口管強を取るメリットはか強診同様、一部の項目で一般の歯科医院よりも高い点数を算定できるため、売上拡大につなげられることです。以下にて口管強と一般歯科医院の場合の算定可能点数を比較しましたのでご確認ください。
また、診療報酬の算定間隔が一般歯科医院とは異なる項目もあります。
加えて、以下のようなこともメリットに挙げられるでしょう。
- 患者への処置や再来時期を最適化し、より効果的な医療が提供できる
- これまで点数化されていなかった事項が評価され、スタッフの意識改革につながる
- 口管強対応であることをアピールし、患者から信頼される
口管強のデメリットは患者の自己負担額増加
口管強のデメリットは、患者の負担する金額が増加してしまうことです。算定できる点数が増えれば、必然的に患者へ請求する一部負担金は大きくなります。告知なしに一部負担金が増加してしまうと、クレームなどの悪影響につながりかねません。トラブル防止のために、口管強に対応した歯科医院である旨をホームページや院内で掲示し、口頭でも患者へ説明しましょう。
口腔管理体制強化加算(口管強)の訪問診療基準クリアに向けて
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