【2026年度】介護の処遇改善加算とは? 算定要件・計算方法・注意点を解説

介護

投稿日:2026.06.01

最終更新日:2026.06.01

ジョブメドレーアカデミー編集部

処遇改善加算は介護職員等の賃金改善を目的とした加算です。2026年度は対象職員の範囲や対象サービスの拡大、上乗せ区分の創設など大きな変更がありました。本記事では最新の算定要件、加算率、届出書類から届出後の注意点までをわかりやすく解説します。

【2026年度】介護の処遇改善加算とは? 算定要件・計算方法・注意点を解説

処遇改善加算とは? 介護職員等処遇改善加算の基本

処遇改善加算とは、介護職員等の賃金改善を図るために設けられた加算制度です。正式名称は「介護職員等処遇改善加算」といいます。

最も重要なルールは、給付された加算額以上の金額を必ず職員の賃金改善に充てなければならないことです。加算を取得するには賃金改善だけでなく、キャリアパス制度の整備、研修機会の確保、職場環境の改善などにも取り組む必要があります。

なお、障がい福祉サービス向けにも同様の加算制度がありますが、介護保険サービス向けとは制度が異なります。本記事では介護保険サービス向けの処遇改善加算に絞って解説します。

処遇改善加算は返還・指定取消リスクに注意

処遇改善加算は算定後の運用や実績報告まで適切に行う必要があります。実績報告書の様式にも「本様式への虚偽記載のほか、処遇改善加算の請求に関して不正があった場合及び指定権者からの求めに応じて書類の提出を行うことができなかった場合は、介護報酬の返還や指定取消となる場合がある。」と明記されています。加算を安定して算定し続けるには要件を正しく理解し、賃金改善の実績や研修記録、職場環境等要件の取り組み記録などの根拠資料を日頃から整備しておくことが重要です。

2026年度(令和8年度)処遇改善加算の変更点

2026年度の処遇改善加算では大きく3つの変更がありました。対象職員の範囲拡大、対象サービスの拡大、上乗せ区分の創設です。

今回の改定は介護分野の深刻な人材不足に対応するため、他職種と遜色ない処遇改善を実現する目的で行われました。具体的には、処遇改善加算の対象を介護職員のみから介護従事者へ広げ、幅広く月1.0万円相当(3.3%相当)の賃上げを可能とする措置が講じられました。

さらに、生産性向上や協働化に取り組む事業所の介護職員には、月0.7万円相当(2.4%相当)の上乗せ措置が設けられています。申請時点で未対応でも、一定の取り組みについては誓約することで算定可能な場合があります。詳細は後述の「令和8年度特例要件」を確認してください。

また、新設対象サービスの加算率や算定要件は既存サービスとは一部異なるため、こちらも後述の「訪問看護など新設対象サービスの加算率と算定要件」で確認してください。

変更点

内容

対象者の拡大

対象が「介護職員」中心から「介護従事者」へ拡大

対象サービスの拡大

これまで処遇改善加算の対象外だった以下のサービスに、新たに処遇改善加算が創設

・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハビリテーション
・居宅介護支援
・介護予防支援

上乗せ区分の創設

生産性向上や協働化に取り組む事業所を評価するため、「Ⅰロ」「Ⅱロ」などの上乗せ区分が新設

対象サービス・加算区分・加算率

処遇改善加算の加算率はサービス種別と加算区分によって異なります。2026年6月以降、既存サービスでは「Ⅰイ」「Ⅰロ」「Ⅱイ」「Ⅱロ」「Ⅲ」「Ⅳ」の6区分が設定されています。たとえば、訪問介護では加算Ⅰイが27.0%、加算Ⅰロが28.7%、通所介護では加算Ⅰイが11.1%、加算Ⅰロが12.0%です。詳細は下表をご確認ください。

既存サービスの加算率

2026年6月以降の既存サービス別加算率一覧

厚生労働省|令和8年度介護報酬改定についてをもとに作成(最終アクセス:2026年5月26日)

処遇改善加算の計算方法・賃金改善の考え方

処遇改善加算の単位数は「介護職員等処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数」にサービスごとに定められた加算率を乗じて算定します。

処遇改善加算の単位数 = 1か月あたりの総報酬単位数 × 加算率

計算例:訪問介護で加算Ⅰイを算定する場合

たとえば訪問介護で加算Ⅰイを算定し、1か月あたりの「介護職員等処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数」が100,000単位だった場合、加算率27.0%を乗じるため、処遇改善加算の単位数は27,000単位です。

項目

サービス種別

訪問介護

加算区分

加算Ⅰイ

加算率

27.0%

処遇改善加算を除く加減算後の総報酬単位数

100,000単位

処遇改善加算の単位数

100,000単位 × 27.0% = 27,000単位

金額換算

27,000単位 × 地域区分別の単価

賃金改善の考え方

処遇改善加算として給付される額は、加算額に相当する額以上を職員の賃金改善のために全額支出する必要があります。賃金改善の対象とする賃金項目は、基本給、手当、賞与等の中から特定して行います。安定的な処遇改善の観点から、基本給による賃金改善が望ましいとされています。

実務上は、以下の点を確認しておきましょう。

  • 加算額に相当する額以上の賃金改善を実施しているか
  • 賃金改善の対象職員と配分方法を明確にしているか
  • 計画書と実績報告で整合性が取れているか

処遇改善加算の算定要件

既存サービスの場合、処遇改善加算を算定するには加算区分ごとに定められた要件を満たす必要があります。要件は大きく4つに分類され、月額賃金改善要件、キャリアパス要件、職場環境等要件、令和8年度特例要件から構成されています。

加算区分ごとの主な要件

区分

主な要件

Ⅰイ

月額賃金改善要件、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅴ、職場環境等要件(区分ごとに

2以上・生産性向上は3以上の取り組み、見える化)が必要

Ⅰロ

Ⅰイの要件に加え、令和8年度特例要件が必要

Ⅱイ

Ⅰイからキャリアパス要件Ⅴを除いた要件が必要

Ⅱロ

Ⅱイの要件に加え、令和8年度特例要件が必要

月額賃金改善要件、キャリアパス要件Ⅰ~Ⅲ、職場環境等要件(区分ごとに1以上、生産性向上は2以上の取り組み)が必要

Ⅲの要件からキャリアパス要件Ⅲを除いた要件が必要

月額賃金改善要件

すべての処遇改善加算の区分において、「処遇改善加算Ⅳを算定した場合に見込まれる加算額」の2分の1以上を、基本給または毎月支払われる手当(基本給等)の改善に充てる必要があります。

新規に処遇改善加算を算定する事業所を除き、賃金総額を新たに増加させる必要はありません。すでに支給している手当や一時金の一部を基本給等に付け替えることで、この要件を満たすことができます。

また、すでにこの要件を満たしている事業所も新たに取り組みを行う必要はありません。ただし、新規に基本給等の引上げを行う場合は、ベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)により行うことが基本とされています。

なお、2026年度に新規算定、上位区分への移行、加算率の引上げなどによって加算額が増加する場合、その増加分については過去の賃金改善実績にかかわらず新たな賃金改善を行う必要があります。月額賃金改善要件を満たしているかだけでなく、2026年度に増えた加算額に相当する賃金改善になっているか、計画書・実績報告で確認できるようにしておきましょう。

キャリアパス要件

キャリアパス要件は職員が将来の役割や処遇を見通しやすくするための要件です。任用要件と賃金体系の整備、研修機会の確保、昇給の仕組み、一定水準以上の賃金者の配置、介護福祉士等の配置要件などが含まれます。

要件

主な内容

キャリアパス要件Ⅰ

職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備

キャリアパス要件Ⅱ

資質向上のための計画策定、研修実施または研修機会の確保

キャリアパス要件Ⅲ

経験・資格・評価等に応じた昇給の仕組みの整備

キャリアパス要件Ⅳ

改善後の賃金年額440万円以上の者を配置

キャリアパス要件Ⅴ

介護福祉士等の配置

キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱはすべての区分で求められる基本的な要件です。就業規則・賃金規程・評価制度に反映しているか、研修計画・受講管理・実施記録はあるか、職員に周知しているかを確認するようにしましょう。

自施設・自事業所でキャリアパス制度の整理・運用が難しい場合や、キャリアパス要件に対応した研修体制の整備に課題がある場合は、ジョブメドレーアカデミーにご相談ください。

ジョブメドレーアカデミーでは、階級・役割・評価指標の整理から、階級別の研修計画作成、受講記録の管理までを一気通貫で支援します。キャリアパス制度を「作って終わり」にせず、職員育成に活用できる仕組みとして運用したい方は、以下より資料をダウンロードしてください。

職場環境等要件

職場環境等要件は職員が働きやすい環境を整えるための取り組みに関する要件です。厚生労働省が示す6区分・28項目の中から、加算区分に応じた数の取り組みを実施します。加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロでは、生産性向上区分を除く5区分ごとに2以上、生産性向上区分で3以上の取り組みが必要です。また、取り組み内容をホームページ等で公表する「見える化」も求められます。加算Ⅲ・Ⅳでは、生産性向上区分を除く5区分ごとに1以上、生産性向上区分で2以上の取り組みが必要です。

職場環境等要件の6つの区分

職場環境等要件の6つの区分と具体的な内容例

加算区分ごとの必要な取組数

各加算区分で要件を満たすのに必要な取組の数

令和8年度特例要件

令和8年度特例要件とは生産性向上や協働化に取り組む事業所を評価するための要件です。上乗せ区分として新設された加算Ⅰロ・Ⅱロを算定する場合は、下表のいずれかの要件を満たす必要があります。

サービス区分ごとの特例要件

サービス区分

特例要件の内容

訪問・通所サービス等

ケアプランデータ連携システムを利用すること

施設サービス等

生産性向上推進体制加算ⅠまたはⅡを取得すること

訪問・通所・施設サービス等

社会福祉連携推進法人に所属していること

なお、ケアプランデータ連携システムの利用と生産性向上推進体制加算の取得については、事務負担への配慮措置として、加算申請時点では令和8年度中の利用・取得の誓約をもって算定可能とされています。

訪問看護など新設対象サービスの加算率と算定要件

新たに処遇改善加算の対象となった(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、居宅介護支援、介護予防支援については、サービスごとに単一区分の加算率が設定されています。

新設対象サービスの加算率

訪問看護、訪問リハ、居宅介護支援、介護予防支援の処遇改善加算の加算率一覧

厚生労働省|令和8年度介護報酬改定についてをもとに作成(最終アクセス:2026年5月26日)

なお、2026年6月以降も(介護予防)福祉用具貸与、特定(介護予防)福祉用具販売、(介護予防)居宅療養管理指導は、処遇改善加算の算定対象外とされています。

新設対象サービスの算定要件

算定にあたっては既存サービスの加算Ⅳに準ずる要件を満たすか、令和8年度特例要件のうち、ケアプランデータ連携システムの利用または社会福祉連携推進法人への所属を満たす必要があります。

訪問看護、居宅介護支援など新対象サービスの処遇改善加算算定要件一覧

厚生労働省|介護職員の処遇改善:TOP・制度概要をもとに作成(最終アクセス:2026年5月26日)

なお、加算Ⅳに準ずる要件、令和8年度特例要件のいずれも、加算申請時点では令和8年度中の利用・取得の誓約をもって算定可能です。

計画書提出・実績報告の期限

処遇改善加算を算定するには処遇改善計画書の提出と実績報告を行う必要があります。加えて、新たに加算を算定する場合や算定区分を変更する場合は、事前に体制届も提出します。

提出書類

基本的な期限・内容

処遇改善計画書

原則、2026年度で初めて算定する月の前々月末までに提出

介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(体制届)

算定開始にあたり事業所ごとに提出


・居宅系は算定開始月の前月15日まで

・施設系は算定開始月の1日まで

実績報告書

各事業年度における最終の加算の支払があった月の翌々月末日まで。2027年3月請求分の加算の支払いを受けるタイミングが2027年5月の場合は、2027年7月31日が期限

変更届出書

算定区分や事業所の増減、キャリアパス要件等の変更がある場合に提出


・居宅系は算定開始月の前月15日まで

・施設系は算定開始月の1日まで

特別事情届出書

事業継続のために賃金水準を引き下げたうえで賃金改善を行う場合に提出。年度を超えて賃金を引き下げる場合は次年度の加算届出時に再提出

2026年度は各指定権者が提出期限を柔軟に取り扱う可能性があるため、詳細は事業所所在地の指定権者・自治体の案内を確認してください。

返還リスクを防ぐために届出後に点検したいこと

処遇改善加算を算定した後は処遇改善計画書の内容に沿って賃金改善を実施し、実績報告で加算額・賃金改善額・配分状況を説明できる状態にしておく必要があります。

特に計画と実績の不整合、賃金改善額の不足、キャリアパス要件や職場環境等要件の記録不足は、指定権者から確認を求められやすいポイントです。届出時点では要件を満たしていても、その後の運用や記録が不十分だと、実績報告や運営指導の際に説明が難しくなる可能性があります。

そのため、算定根拠となる資料を適切に整理・保管し、指定権者から求められたときに速やかに提示できる体制を整えておきましょう。

実務上の点検項目

点検項目

確認ポイント

処遇改善計画書との整合性

計画した賃金改善額・対象職員・配分方法と実績に大きなズレがないか

賃金改善

加算額に相当する額以上を賃金改善に充てているか

職員周知

賃金改善計画、キャリアパス、職場環境等要件の取り組みについて職員に説明しているか

研修記録

受講者・実施日・研修内容・実施方法を記録しているか

職場環境等要件

実施した取り組み内容と周知状況を記録しているか

根拠資料の保管

就業規則、賃金規程、労働保険関係書類等を保管しているか

根拠資料の保管期間

処遇改善加算の算定にあたっては、処遇改善計画書・実績報告書およびその内容を証明する資料を適切に保管し、都道府県等から提出を求められた場合は速やかに対応する必要があります。

厚生労働省通知では処遇改善計画書・実績報告書および根拠資料を2年間保存することとされています。一方で、自治体によっては条例や案内資料で5年間保存するよう求めている場合もあります。管轄する自治体の案内を必ず確認してください。

研修計画・受講管理・実施記録も重要

キャリアパス要件や職場環境等要件への対応では、研修計画、受講管理、実施記録の整備が重要です。研修を実施していても記録が残っていなければ、後から取り組みの状況を確認することができません。以下をチェックし、記録を整備しておきましょう。

  • 年間研修計画を作成しているか
  • 職員ごとの受講状況を管理しているか
  • 研修の実施日・内容・受講者を記録しているか
  • 計画書・実績報告と記録内容に矛盾がないか

研修の管理を担当者個人の表計算ファイルや紙の記録だけに頼ると、異動・退職時に情報が分散するおそれがあります。加算算定にあたっては、事業所全体で確認できる記録管理の仕組みを整えておくことが大切です。

まとめ

2026年度の処遇改善加算は、対象職員の範囲とサービスの拡大、上乗せ区分の創設など、大きな変更がありました。算定にあたっては賃金改善だけでなく、キャリアパス要件や職場環境等要件に関する取り組みを継続的に実施し、職員への周知や記録を残しておくことが重要です。特に事業所内で行う研修やeラーニングについては、計画の作成、受講状況の管理、実施記録の整備まで一体的に管理できる体制を整えておきましょう。

ジョブメドレーアカデミーは、介護施設・事業所の研修計画作成から受講記録の管理までをまとめてサポートします。処遇改善加算への対応で事業所内研修や記録管理の体制を整えたい方は、お気軽にお問い合わせください。

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