介護職員等処遇改善加算とは? 算定要件や計算方法をわかりやすく解説

介護

投稿日:2024.07.31

最終更新日:2024.08.05

ジョブメドレーアカデミー編集部

介護職員等処遇改善加算とは、介護職員などの処遇改善を図るための加算制度です。従来の3つの加算制度が一本化され、2024年6月に現在の形となりました。制度の概要や旧加算との違い、サービス種類別の加算率、届出方法などについて詳しく解説します。

介護職員等処遇改善加算とは? 算定要件や計算方法をわかりやすく解説

介護職員等処遇改善加算とは

2024年6月施行の新しい処遇改善加算

介護職員等処遇改善加算とは、施設のケアマネジャーや事務職員等を含む、介護サービスに従事する職員の処遇改善を図るための加算制度です。元々は介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の3つの加算制度が用意されていましたが、2024年6月より介護職員等処遇改善加算に一本化されました。

3つの介護職員処遇改善加算が統合され、介護職員等処遇改善加算となりました

そもそも処遇改善加算は、介護業界の人手不足を改善するために設けられました。少子高齢化が進む日本では介護サービスのニーズが増大しています。しかし、介護報酬は上限が定められているため職員の給与を上げにくく、人材確保が業界全体の大きな課題となっています。このような状況を受け、職員の賃金改善や職場環境の整備のために3つの加算が順次設けられ、2024年度の介護報酬改定で統合されました。

処遇改善加算一本化の狙い

処遇改善加算の一本化は次の観点からおこなわれました。

  • 事業者の賃金改善や届出に係る事務負担を軽減する
  • 利用者負担の理解を得やすくする
  • 柔軟な事業運営を可能にする

なかでも重視されたのが届出に係る事務負担の軽減です。旧3加算のなかでも介護職員等特定処遇改善加算はとくに手続きが複雑であり、ほかの2つの加算制度の取得率が9割を超えているのに対し、同加算の取得率は7割台にとどまっていました。そこで、介護職員等の確実な待遇改善に向けて制度を簡素化すべく新加算が創設されたのです。

対象外のサービス

介護職員等処遇改善加算はすべての介護サービスが算定できるわけではありません。基準上、介護職員が配置されていない以下のサービスは加算を受けられないためご注意ください。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 福祉用具貸与
  • 特定福祉用具販売
  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 特定介護予防福祉用具販売
  • 居宅介護支援
  • 介護予防支援

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新処遇改善加算の構造と配分ルール

新加算は4区分のみ 

新加算は旧3加算の各区分の要件と加算率を組み合わせたうえで、4つの区分に再編されました。

ここで注意したいのが、新加算への移行によって旧3加算で取得していた加算率に相当する区分が無くなるケースがあることです。旧3加算は加算区分の組み合わせが全部で18通りありました。しかし新加算は4通りのみのため、新加算の加算率が従前の加算率を下回る可能性があるのです。

旧3加算は加算の組み合わせが3×3×2で18通りありましたが、新加算は4通りです

その激変緩和措置として設けられたのが、旧3加算の取得状況に応じて算定される「区分Ⅴ」です。新加算への移行により加算率が低下しても、2025年3月までは従前の加算率を維持できる仕組みです。

厚生労働省|処遇改善加算の一本化及び加算率の引き上げ(令和6年6月〜)令和6年度介護報酬改定での見直しの概要・令和6年度の申請様式等 事業者向けリーフレットをもとに作成(最終アクセス:2024年7月30日)

賃金配分のルール

新加算と旧3加算の違いは、賃金配分のルールにも見られます。旧3加算は加算ごとに配分ルールが異なりましたが、新加算では「介護職員への配分を基本とするが(とくに経験や技能のある職員に重点的に配分する)、事務所内で柔軟な配分を認める」ことが4区分の統一ルールとされました。なお、パートや派遣職員も加算の対象です。

介護職員処遇改善加算の配分対象者は介護職員に限定されていましたが、介護職員等処遇改善加算は事業所内での柔軟な配分が可能です

サービス種類別の加算率

以下の表は新加算の4つの区分(Ⅰ~Ⅳ)と、激変緩和措置のために設けられた区分Ⅴのサービス別加算率をまとめたものです。2024年度介護報酬改定では、加算率が最大2.3パーセント引き上げられました。

<介護職員等処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの加算率>

21のサービス区分ごとに加算Ⅰ~Ⅳの加算率が定められています

<介護職員等処遇改善加算Ⅴの加算率>

経過措置の加算Ⅴは、さらに14の区分に分かれています

厚生労働省|(参考)介護職員等処遇改善加算の加算率(サービス類型ごと・令和6年度中)をもとに作成(最終アクセス:2024年7月30日)

新処遇改善加算の算定要件 

新処遇改善加算Ⅰ~Ⅳの要件

新加算の算定要件は、旧3加算と同様に「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の大きく3つに分かれており、算定する区分に応じて各要件を満たす必要があります。算定要件のなかには、経過措置として2025年3月末まで適用が猶予されるものもあります。

加算を算定するには「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」を満たす必要があります

なお、2025年4月以降に適用される職場環境等要件は以下のとおりです。

2025年度より適用される職場環境等要件は全部で28項目あります

新加算の要件確認時における重要なポイントは、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合に、介護サービスの情報公表制度を活用して取り組みの内容を公開する必要があることです。処遇改善加算の算定状況と、職場環境等要件の取り組み項目や具体的な内容を「事業所の特色」欄に記載しましょう。情報公開制度の報告の対象となっていなくても、事業所のホームページなどを用いて外部から見える形で公表する必要があります。

加算Ⅴからの移行について

上記で紹介した経過措置や加算Ⅴ(1~14)は、一時的に設けられたものです。2025年3月末までに新加算の要件を満たせなかった場合、次年度以降は加算を受けられなくなります。2025年3月末までに必ず要件をクリアしておきましょう。

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新処遇改善加算の届出方法

届出書類と提出期限

処遇改善加算は算定の前後にそれぞれ書類を提出する必要があります。新処遇改善加算の届出時は、主に以下の2つの書類を提出します

<届出時に提出する書類>

  • 処遇改善計画書
  • 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(体制届)
    ※処遇改善加算の新規申請時・2024年6月以前に旧3加算のいずれかを取得している場合のどちらにおいても、上記2つの書類の提出が必要です

従来は、加算区分の変更がなければ体制届の提出は不要でしたが、2024年6月以降は新加算を取得する全事業所・施設が体制届を提出する必要があります。

なお、必要書類は事業所の規模や算定する区分などによってフォーマットが異なります。以下は処遇改善計画書のフォーマット一覧です。

原則100事業所までは、別紙様式2-1~2-4の処遇改善計画書を使用します

届出書類の提出期限は以下のとおりです。

新規に加算を取得する場合は、算定を受けようとする月の前々月末日までに計画書を提出します

<算定後に提出する書類>

算定後には実績報告書の提出が求められます。こちらも事業規模等によってフォーマットが分かれていますのでご注意ください。

原則100事業所までは、別紙様式3-1~3-3の実績報告書を使用します

実績報告書の提出期限は以下のとおりです。なお、新規届出をおこなう場合、初年度は実績報告書の提出が必要ありません。例えば2024年6月以降に初めて処遇改善加算の届出をした際は、実績報告書の提出は2025年度からとなります。

各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月末日までに実績報告書を提出してください

新処遇改善加算の計算方法

処遇改善加算の総額を求める方法は以下のとおりです。

  1. 1ヶ月の総単位数(基本サービス単位数+加算と減算の合計)を出す
  2. 1ヶ月の総単位数に加算率をかけ、処遇改善加算の総単位数を出す
  3. 処遇改善加算の総単位数に地域区分単価をかける

2024年度の各サービスの加算率については、「3.サービス種類別の加算率」に記載した表を参考にしてください。また、サービス別の単位数や、地域区分については、「介護給付費等単位数サービスコード(令和6年4月施行版)」「地域区分について」をご参照ください。

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