2026年10月から義務化! 介護事業者が備えるべきカスタマーハラスメント対策

介護障がい福祉訪問看護

投稿日:2026.08.27

最終更新日:2026.08.27

ジョブメドレーアカデミー編集部

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防止するための措置がすべての事業主に義務付けられます。本記事では介護事業者が講ずべき対策を中心に、障がい福祉・訪問看護の現場で求められる留意点も解説します。

2026年10月から義務化! 介護事業者が備えるべきカスタマーハラスメント対策

カスタマーハラスメント対策が義務化

2026年10月1日に改正労働施策総合推進法が施行され、事業主にカスハラを防止するための雇用管理上の措置が義務付けられます。

介護分野では、これまでも厚生労働省がカスハラ防止のための方針明確化などを推奨してきました。今回の法改正により、業種や事業規模を問わず、すべての事業主にカスハラ防止措置が義務化されます。

義務化の内容

義務化されるのは、カスハラを法律で禁止することではありません。事業主に求められるのは、カスハラの防止や発生後の対応に必要な体制整備です。

厚生労働省の指針では、その具体的な内容として次の措置が示されています。

  1. カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発する
  2. カスハラの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、労働者に周知する
  3. 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
  4. 相談窓口担当者が、適切に対応できるようにする
  5. 事実関係を迅速かつ正確に確認する
  6. 被害者に対する配慮のための措置を行う
  7. 再発防止に向けた措置を講ずる
  8. 特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する
  9. 相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者に周知する
  10. 相談したこと等を理由として不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する

*出典:厚生労働省|令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!(最終アクセス:2026年8月25日)

つまり、利用者や家族とのトラブルが起きてから現場職員が個別に対応するのではなく、「方針を決める」「相談できる体制を整える」「発生後に組織として対応する」「職員に周知する」といった準備が必要になります。

こうした方針や対応方法を職員に周知・浸透させる手段の一つが、職員研修です。ジョブメドレーアカデミーではカスハラを含むハラスメント対策研修を提供しています。職員への周知・教育や研修管理の効率化を検討している方は、サービス資料をご覧ください。

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介護現場でカスタマーハラスメント対策が重要な理由

介護現場では利用者本人だけでなく、その家族とも継続的に関わります。入浴や排泄などの身体介助では利用者との物理的な距離が近く、訪問介護では利用者宅で職員が一人で対応する場面もあります。

こうした介護サービス特有の環境下では、利用者・家族とのトラブルやハラスメントが生じることがあります。また、介護現場では「利用者だから仕方がない」「専門職だから我慢すべき」と職員が問題を抱え込んでしまうケースもみられます。

厚生労働省は介護人材の確保を重要な課題に位置づけ、ハラスメント対策を含めた職場環境の改善が必要だとしています。ハラスメントへの対応を職員個人の我慢や経験だけに任せるのではなく、事業所として職員を守る仕組みを整えることが重要です。

カスタマーハラスメントとは? 正当な苦情との違い

カスハラ対策を進めるには、まず「どのような言動がカスハラに該当するのか」を理解することが大切です。一方で、利用者や家族から寄せられる正当な苦情や要望までカスハラとして扱わないよう注意が必要です。

カスタマーハラスメントの定義

厚生労働省の指針では、カスハラついて「次の3つの要素をすべて満たすもの」としています。

  1. 顧客等による言動である
  2. 労働者が従事する業務の性質などに照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動である
  3. その言動によって労働者の就業環境が害される

ここでいう「顧客等」には商品やサービスを購入する人だけでなく、施設の利用者なども含まれます。そのため、介護サービスの利用者やその家族による言動も、要件を満たせばカスハラに該当する可能性があります。

また、対面での言動だけでなく、電話やSNSなどインターネット上で行われるものも対象となり得ます。

正当な苦情・要望はカスタマーハラスメントではない

利用者や家族からの苦情や要望が、すべてカスハラになるわけではありません。

例えば、提供した介護サービスに問題があり、利用者や家族が改善を求めること自体は正当な申し入れです。社会通念上許容される範囲で行われる苦情や要望は、カスハラに該当しません。

一方、要求そのものに理由がない場合や、契約で想定されているサービスの範囲を著しく超えた要求、暴力・脅迫・侮辱、長時間の拘束など、要求内容や言動の手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えている場合には、カスハラに該当する可能性があります。

カスハラに該当するか迷う場合は、管理者や相談窓口に共有し、事業所として判断します。

認知症などが背景にある場合の注意点

カスハラかどうかを判断する際には、利用者の状態や症状が言動に影響している可能性にも目を向ける必要があります。

例えば、認知症の症状や身体状態の変化などが暴言や暴力といった言動に影響する場合があります。表面的な行為だけを見て、一律にカスハラと判断するのは適切ではありません。

一方、症状などが背景にある場合でも職員の安全確保は必要です。利用者の状態を踏まえた支援と、職員の安全確保の両方を検討します。

介護現場で起こり得るカスタマーハラスメントの例

介護現場では、利用者やその家族からさまざまな言動を受ける可能性があります。代表的な例を以下にまとめます。

類型

具体例

身体的な攻撃

職員を殴る・蹴る、物を投げつけるなど

精神的な攻撃

大声で怒鳴る、脅す、人格を否定するような暴言を繰り返すなど

過度・不当な要求

契約範囲を著しく超えるサービスを執拗に求める、対応できない要求を繰り返すなど

拘束的な言動

長時間にわたって職員を拘束する、帰ろうとする職員を引き止めるなど

性的な言動

不必要に身体へ触れる、性的な発言を繰り返すなど

プライベートへの過度な干渉

個人的な連絡先や交際を求める、勤務時間外に繰り返し接触を試みるなど

インターネット上の攻撃

SNSなどで職員個人への中傷を繰り返すなど

ただし、同じような言動であっても、その背景や状況によって判断は異なります。表に該当する行為があれば自動的に「カスハラ」と判断できるわけではありません。

利用者本人の状態、要求の内容、言動の態様などを踏まえながら、事業所として対応を検討する必要があります。

介護事業者が取り組むべきカスタマーハラスメント対策

法施行に向け、介護事業者はカスハラが発生する前から必要な体制を整えておくことが求められます。ここでは、事業者として特に確認しておきたいポイントを紹介します。

基本方針の明確化・周知

まず、事業所としてカスハラにどう対応するのかを明確にします。厚生労働省の指針では、カスハラには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化したうえで、職員に周知・啓発することが求められています。

あわせて、以下を整理しておきましょう。

  • どのような行為をカスハラとして考えるのか
  • 発生した場合、職員は誰に相談するのか
  • 一人で対応させないなど、事業所としてどのように職員を守るのか
  • 悪質なケースにはどのように対応するのか

事業者の方針を利用者や家族にも示しておくことは、トラブルの予防につながります。

相談体制の整備

職員がカスハラを受けたと感じたときに、安心して相談できる体制を整えます。相談窓口をあらかじめ決め、誰に・どのような方法で相談すればよいのかを職員に周知しましょう。

また、窓口を設置するだけでは十分ではありません。相談を受ける担当者が適切に対応できるよう、必要な知識や対応方針を共有しておくことが重要です。

相談者などのプライバシーを守ることや、相談したことを理由に不利益な取り扱いをしないことについても、あらかじめ明確にして職員に周知します。

職員が「相談しても対応してもらえない」と感じる状態では、問題を一人で抱え込みやすくなります。相談を組織対応につなげられる仕組みを整えましょう。

発生後に組織として対応できる体制の整備

カスハラが疑われる事案が起きた場合に備え、事実確認から職員への配慮、再発防止までを組織として進められる体制を整えておきます。

厚生労働省の指針では、発生後の対応として主に次の事項が示されています。

  • 事実関係を迅速かつ正確に確認する
  • 被害を受けた職員への配慮を行う
  • 再発防止措置を講じる
  • 特に悪質なカスハラに対して、あらかじめ定めた方針に沿って対応できる体制を整える

介護現場では利用者や家族との関係を継続する必要があるケースも少なくありません。カスハラに該当する事案が発生しても、直ちにサービス提供を拒否できるとは限りません。

厚生労働省は「サービス提供困難事例に対する対応」として、介護サービス事業者は基準省令上、正当な理由なくサービス提供を拒めないと示しています。サービス提供が困難と判断した場合にも、必要に応じて他の事業所を紹介するなど、利用者に必要なサービス提供に支障が生じないよう適切な措置を講じることが求められます。

管理者や法人本部、必要に応じて行政や警察、弁護士などとも相談しながら、職員保護とサービス提供の両面から対応を検討することが重要です。

職員への周知・研修

方針や相談窓口を整えても、現場の職員がその内容を知らなければ実際の対応にはつながりません。カスハラに関する職員への周知・研修を行い、以下について共通認識を持てるようにします。

  • どのような言動がカスハラになり得るのか
  • 正当な苦情や要望とはどのように考え方が異なるのか
  • 問題が起きたとき、どこに相談・報告すればよいのか
  • 個人で抱え込まず、組織として対応すること

特に介護現場では、利用者との関係性や認知症などの背景も踏まえながら考える必要があります。「どんな言動でも我慢する」「反対に、強い言動はすべてカスハラとする」といった画一的な対応にならないためにも、職員教育は欠かせません。

また、一度研修を実施して終わりではなく、新入職員への教育や定期的な振り返りなどを通じて、事業所の方針を継続的に共有していくことが求められます。

【あわせて読みたい】

介護施設・事業所で実施が求められる研修や、年間研修計画の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

【2026年度】介護施設・事業所の法定研修一覧|対象サービスや運営指導対策を解説

障がい福祉・訪問看護でもカスタマーハラスメント対策は必要

2026年10月からのカスハラ防止措置は介護事業者に限らず、障がい福祉サービス事業者や訪問看護事業者にも共通して求められます。ただし、サービスの特性に応じて留意すべき点があります。

障がい福祉の現場では、障がい特性や病状、意思表明の方法が言動に影響する場合があります。障害者差別解消法では事業者に合理的配慮の提供が義務付けられており、合理的配慮を求める意思表明自体はカスハラに当たりません。利用者の権利を尊重すると同時に、職員の安全や就業環境も守る視点が求められます。

訪問看護においても、訪問介護と同様に利用者宅で職員が一人になる場面があります。暴力やハラスメントが発生した場合に職員個人へ対応を委ねないよう、相談・報告のルールや組織としての対応方針を決めておくことが大切です。

まとめ

2026年10月1日から、すべての事業主にカスハラを防止するための措置が義務付けられます。介護事業者も法施行までに必要な体制を整えていく必要があります。

しかし、体制やルールを作るだけでは十分ではありません。実際に利用者や家族と接する職員が事業所の方針を理解し、問題が起きたときに一人で抱え込まず、管理者や相談窓口につなげられる状態にしておくことが重要です。

カスハラ対策を「制度への対応」で終わらせず、職員が安心して働ける環境づくりにつなげるためにも、継続的な周知・教育・研修が不可欠です。

カスハラ対策を含む職員研修の体制を見直したい方は、ジョブメドレーアカデミーもご活用ください。介護・障がい福祉・訪問看護事業者向けのオンライン動画研修と受講管理機能で、継続的な研修運用をサポートします。

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