2025年度の取得に! 通所介護(デイサービス)の介護職員等処遇改善加算の加算率や要件を解説

介護

投稿日:2024.12.13

最終更新日:2024.12.13

ジョブメドレーアカデミー編集部

介護職員等処遇改善加算は、2024年度の介護報酬改定で新設されました。通所介護(デイサービス)の加算率は最大9.2%です。本記事では、制度の概要や通所介護の算定要件、2024年度内に対応すべきことなどについて詳しく解説します。

2025年度の取得に! 通所介護(デイサービス)の介護職員等処遇改善加算の加算率や要件を解説

介護職員等処遇改善加算とは

介護職員の賃金や労働環境を改善するための制度

介護職員等処遇改善加算は、介護サービスに従事する職員の賃金向上や労働環境の改善を目的として創設された加算制度です。介護職員等の処遇改善に関わる3つの加算制度(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算=旧加算)が一本化され、2024年6月より介護職員等処遇改善加算(=新加算)が施行されました。

2024年度の介護報酬改定では、処遇改善分が2年分措置されています。そのため、従来の処遇改善加算のように、1年度内に加算で得た全額を処遇改善に使用する必要はありません。具体的には、2025年度分を2024年度に前倒しして賃金改善に充てたり、2024年度の加算額の一部を2025年度内に繰り越したりすることもできます。

また、2024年度の税制改正によって、処遇改善加算を活用して賃上げした分も、賃上げ促進税制による税額控除の対象となりました。賃上げ促進税制とは、事業者が賃上げをおこなった際に、賃上げ額の一部を法人税などから控除できる制度のことです。例えば、中小企業(※)の場合は給与等の増加額に応じて最大45%を法人税額から控除できるほか、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を5年にわたって繰り越すこともできます。
※青色申告書を提出する中小企業者等又は常時使用する従業員数が1000人以下の個人事業主

処遇改善加算の支給対象者

新加算の支給対象者は介護職員を基本としているものの、事務所内での柔軟な配分も認められています。従業員の雇用形態は問わないため、パートや派遣職員、介護事業の運営に携わる事務員も支給対象となります。

ただし、自治体によっては、代表者や役員などが支給対象外となる点にご注意ください。届出の際は、指定を受けた自治体に支給対象者について確認しましょう。

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通所介護(デイサービス)における処遇改善加算の区分と加算率

処遇改善加算の加算率一覧

通所介護(デイサービス)における処遇改善加算は、Ⅰ〜Ⅳまでの4区分に分かれています。区分ごとに満たすべき要件や加算率が異なり、最大加算率は9.2%です。

なお、2024年度の介護報酬改定では、加算一本化の経過措置として区分Ⅴ(1~14)も設けられました。しかし、加算Ⅴはすべて2025年3月31日に廃止されます。2025年4月以降は区分Ⅰ〜Ⅳへの移行が必要ですのでご注意ください。

通所介護の介護職員等処遇改善加算の加算率はⅠが9.2%、Ⅱが9.0%、Ⅲが8.0%、Ⅳが6.4%です。

厚生労働省|介護職員等処遇改善加算の加算率(サービス類型ごと・令和6年度中)令和6年度介護報酬改定での見直しの概要・令和6年度の申請様式等 事業者向けリーフレット をもとに作成(最終アクセス:2024年12月12日)

処遇改善加算の計算方法や加算区分Ⅴについて詳しく知りたい方は、新加算の全体像を解説した以下の記事をご覧ください。

介護職員等処遇改善加算とは? 算定要件や計算方法をわかりやすく解説

処遇改善加算ⅠとⅡの違い

上表のとおり、処遇改善加算Ⅰの加算率は同Ⅱよりも0.2%高く設定されています。これは、算定要件にキャリアパス要件Ⅴの「介護福祉士等の配置要件」が含まれるか否かによる違いです。

キャリアパス要件Ⅴを満たしていれば処遇改善加算Ⅰ(加算率9.2%)の算定が可能になり、満たしていなければ同Ⅱ(加算率9.0%)までの算定となります。同要件については、次項の「キャリアパス要件の詳細」にて詳しく解説します。

通所介護(デイサービス)における処遇改善加算の算定要件

月額賃金改善要件の詳細

月額賃金改善要件Ⅰとは、加算のうち一定額を基本給等の改善に充てることを目的とした要件です。新加算Ⅳ(6.4%)の加算額の1/2(3.2%)以上を、基本給等で配分することが求められます。本要件は2025年度より適用となります。

月額賃金改善要件Ⅱは、介護職員等ベースアップ等支援加算(ベア加算)を未取得の事業所のみ適用される要件です。新加算の取得時に、増加した旧ベア加算相当の2/3以上の基本給等を改善する必要があります。

キャリアパス要件の詳細

キャリアパス要件Ⅰとは、任用要件や賃金体系に関する要件です。「介護職員の職位や職務内容等に応じた任用要件を定めていること」「職位や職務内容に応じた賃金体系を定めていること」「先述の内容について書面で整備したうえ、全ての職員に周知していること」の3つを満たす必要があります。

キャリアパス要件Ⅱは、研修の実施等に関する要件です。「介護職員の職務内容を踏まえ、資質向上の目標および研修の提供または資格取得支援等に関する具体的な計画を策定し、研修の機会を確保すること」「先述の内容を全ての介護職員に周知すること」の2つを満たすことが求められます。単に目標の設定や研修をおこなうだけでなく、研修を受講するためのシフト調整や、職員の能力評価などまで実施する必要があります。

キャリアパス要件Ⅲは、昇給の仕組みの整備等に関する要件です。「経験や資格に応じて昇給する仕組み、あるいは定期に昇給を判定する仕組みを設けていること」「先述の内容を書面で整備し、全ての介護職員に周知すること」の2つを満たす必要があります。

キャリアパス要件Ⅳは、改善後の年額賃金に関する要件です。経験や技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金額を年額440万円以上にする必要があります。ただし、小規模事業所等で加算額全体が少額であるなど、賃金改善が困難な場合は要件を満たせなくても問題ありません。

キャリアパス要件Ⅴは、介護福祉士等の配置に関する要件です。サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置することが求められます。通所介護(デイサービス)においては、サービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡを算定している必要があります。

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職場環境等要件の詳細

2025年度からの職場環境等要件は、全部で6区分28項目が設けられています。新加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合は、各区分のうち2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)を満たす必要があるほか、実施した取り組み内容を情報公表システム等で具体的に公表することが求められます。また、新加算Ⅲ・Ⅳを算定する場合は、各区分のうち1つ以上(生産性向上は2つ以上)を満たす必要があります。

介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件には、入職促進に向けた取り組み、生産性向上のための取り組みなど6つの区分があります。

厚生労働省|旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ~Ⅳの算定要件(早見表)をもとに作成(最終アクセス:2024年12月12日)

それぞれの区分について順番に説明すると、1つ目の「入職促進に向けた取り組み」には、幅広い採用の仕組みの構築や、職業体験の受け入れ等による職業魅力度向上の取り組みの実施などが挙げられます。

2つ目の「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」は、働き方に関する定期的な相談の機会の確保、研修の実施やキャリア段位制度と人事考課との連動など、スキルアップに関する内容が中心となっています。

3つ目の「両立支援・多様な働き方の推進」には、休業制度等の充実や業務の属人化の解消などが挙げられます。

4つ目の「腰痛を含む心身の健康管理」には、職員相談窓口の設置等相談体制の充実や、休憩室の設置など健康管理対策の実施が含まれます。

5つ目の「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取り組み」には、ICT機器の導入や業務改善活動の体制構築など、職場環境の整備に関する内容が中心となっています。

6つ目の「やりがい・働きがいの醸成」は、ケアの好事例等の情報を共有する機会の提供や、介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善などが挙げられます。

なお、新加算ⅠまたはⅡを算定する場合は、生産性向上に関する区分のうち、「生産性向上ガイドライン」に基づいた業務改善活動の体制構築と、現場の課題の見える化の実施に必ず取り組む必要があるためご注意ください。

処遇改善加算の提出書類と期限

介護職員等処遇改善加算の算定にあたっては、事前に処遇改善計画書と介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(体制届)の提出が必要です。また、算定後にも実績報告書の提出が求められます。各書類の提出期限については、以下の表をご確認ください。

処遇改善計画書

2月

※上記は4月から算定を開始する場合。ただし変更の可能性あり

体制届

3月~4月

※変更の可能性あり

実績報告書

各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月末日まで

埼玉県|介護職員等処遇改善加算 各種申請(令和6年度)をもとに作成(最終アクセス:2024年12月12日)

上表は2024年12月時点の情報をもとに作成しています。処遇改善計画書や体制届の提出期限は変わる可能性もあるため、提出時には各自治体のホームページで2025年度の最新情報をご確認ください。

2024年度中に対応すべきこと

加算Ⅴを取得している場合

経過措置区分の加算Ⅴを取得している事業所は、2025年3月31日までに加算Ⅰ〜Ⅳへの移行が必要です。もし期日までに移行できなかった場合は、加算を受けられなくなってしまいます。2024年度時点で加算Ⅰ〜Ⅳの算定に必要な要件を満たしていない場合は、なるべく早く対応しましょう。

2024年度内の対応を誓約した場合 

新加算の算定要件のなかには、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳや職場環境等要件など、2024年度中の対応を誓約することで加算を取得できる要件もあります。対応の誓約によって加算Ⅰ〜Ⅳを取得している事業所は、2025年3月末日までに未対応の要件をクリアしておきましょう。

2024年6月からの新要件で加算Ⅰ~Ⅳを取得している場合

2025年度より新たに適用となる月額賃金改善要件Ⅰの対応が必要です。また、職場環境等要件も2024年度とは一部異なるため、2025年3月末日までに内容を見直し、必要に応じて対応をおこなってください。

2024年度中に対応すべき要件一覧

2024年度中に対応すべき要件については、以下の表を参考にしてください。

2025年度より介護職員等処遇改善加算Ⅰ~Ⅳを維持、または同加算に移行する場合は、2025年3月末までに月額賃金改善要件Ⅰ等の対応をおこなってください。

厚生労働省|令和6年度中に対応が必要な要件(早見表)をもとに作成(最終アクセス:2024年12月12日)

2024年度に加算Ⅴを取得している事業所は、2025年3月末までに黄色の要件を満たす必要があります。また、2024年度内の対応を誓約して新加算を取得している事業所は、同じく2025年度末までに、緑色の要件を満たすことが求められます。2024年6月からの新要件で加算Ⅰ~Ⅳを取得している事業所は、2025年3月末までに青色の要件を満たしてください。

いずれのケースにおいても、2025年3月末までの対応が必須となっています。期限内に対応できないと加算を受けられなくなってしまうため、できるだけ早い対応をおすすめします。

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通所介護(デイサービス)における介護職員等処遇改善加算の最大加算率は9.2%です。人材不足が深刻化するいま、採用力強化や職員のモチベーションアップのために、より上位の処遇改善加算を取得しましょう。

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