2025年度の受付開始! 訪問介護の介護職員等処遇改善加算の加算率や要件を解説

介護

投稿日:2024.11.27

最終更新日:2025.02.28

ジョブメドレーアカデミー編集部

介護職員等処遇改善加算は2024年度の介護報酬改定で新設されました。全部で4つの区分があり、訪問介護の加算率は最大24.5%です。本記事では制度の概要や訪問介護の算定要件、2025年度の申請にあたり対応すべきことなどについて解説します。

2025年度の受付開始! 訪問介護の介護職員等処遇改善加算の加算率や要件を解説

介護職員等処遇改善加算とは

介護職員の賃金や労働環境を改善するための制度

介護職員等処遇改善加算とは、介護サービスに従事する職員の賃金や労働環境の改善を目的として創設された制度です。2024年度の介護報酬改定で、介護職員等の処遇改善に関わる3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算=旧加算)が一本化され、2024年6月より介護職員等処遇改善加算(=新加算)が施行されました。

従来の処遇改善加算は1年度内に加算で得た全額を介護職員等の処遇改善に使用する必要がありました。しかし、今回の介護報酬改定では2年分が措置されたため、2025年度分を2024年度に前倒しして支給したり、前倒しした2024年度の加算額の一部を2025年度内に繰り越したりすることもできます。

また、2024年度の税制改正によって、処遇改善加算を活用して賃上げした分も、賃上げ促進税制による税額控除の対象となりました。例えば中小企業(※)では、全雇用者の給与等支給額の増加に応じて以下のように法人税額から控除できるほか、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を5年間にわたって繰り越すことも可能です。
※青色申告書を提出する中小企業者等または常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主

  • 全雇用者の給与等支給額が1.5%増加した場合:最大30%を控除
  • 全雇用者の給与等支給額が2.5%増加した場合:最大45%を控除

処遇改善加算の支給対象者

介護職員等処遇改善加算の支給対象者は介護職員を基本としているものの、事務所内での柔軟な配分も認められています。パートや派遣職員などの雇用形態を問わないほか、介護事業の運営に携わる事務員も支給の対象となっています。

ただし、自治体によっては代表者や役員などが支給対象外となる点にご注意ください。支給対象者については、指定を受けた自治体に確認したうえで届出をしましょう。

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訪問介護における処遇改善加算の区分と加算率

訪問介護における処遇改善加算は、Ⅰ~Ⅳの4区分に分かれています。以下の表のとおり、それぞれの区分ごとに満たす要件や加算率が異なり、最大加算率は24.5%となっています。

訪問介護の介護職員等処遇改善加算の加算率はⅠが24.5%、Ⅱが22.4%、Ⅲが18.2%、Ⅳが14.5%です。

なお、2024年度の介護報酬改定では、加算一本化の経過措置として区分Ⅴ(1~14)が設けられましたが、2025年3月31日をもって廃止されることが決定しています。処遇改善加算の計算方法や加算区分Ⅴについては、以下の記事をご覧ください。

【2025年度最新版】介護職員等処遇改善加算とは? 算定要件や計算方法をわかりやすく解説

訪問介護における処遇改善加算の算定要件

月額賃金改善要件の詳細

月額賃金改善要件Ⅰでは、新加算Ⅳ(加算率14.5%)の加算額の1/2以上(加算率7.2%相当)を基本給等で配分することが求められます。例えば、介護報酬が500万円の事業所が新加算Ⅳを算定する場合、加算額は500万円×14.5%の72万5,000円となり、そのうち1/2である36万2,500円以上を配分します。なお、本要件は2025年度より適用となります。

月額賃金改善要件Ⅱは、介護職員等ベースアップ等支援加算(旧ベア加算)未取得の事業所のみに適用される要件です。新加算の取得時に、旧ベア加算相当の2/3以上の基本給等を新たに改善することが求められます。

キャリアパス要件の詳細

キャリアパス要件は、以下のように定められています。

  • Ⅰ:任用要件や賃金体系について
  • Ⅱ:研修の実施等について
  • Ⅲ:昇給の仕組みについて
  • Ⅳ:改善後の賃金額について
  • Ⅴ:介護福祉士等の配置について

キャリアパス要件Ⅰは任用要件や賃金体系についての要件です。「職位や職務内容等に応じた介護職員の任用要件を定めていること」「職位や職務内容等に応じた賃金体系を定めていること」「先述の2つの内容を書面で整備し、全ての介護職員に周知すること」の3つを全て満たしている必要があります。

キャリアパス要件Ⅱは研修の実施等に関する要件です。「介護職員の職務内容を踏まえ、資質向上の目標や資格取得支援等の具体的な計画を策定し、研修の機会を確保すること」「先述の事項を全ての介護職員に周知していること」の両方を満たす必要があります。なお、ここでの「資質向上の目標」とは、介護職員が介護技術や問題解決能力の向上に努めることや、介護福祉士等の資格の取得率向上などが挙げられます。

キャリアパス要件Ⅲは昇給の仕組みについての要件です。「介護職員の経験または資格に応じて昇給する仕組み、あるいは定期に昇給を判定する仕組みを設けること」「先述の内容を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること」の両方を満たす必要があります。

キャリアパス要件Ⅳは改善後の賃金額に関する要件です。経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金額を年額440万円以上にする必要があります。ただし、小規模事業所等で加算額全体が少額であるなど、賃金の引き上げが困難な場合はこの限りではありません。

キャリアパス要件Ⅴは介護福祉士等の配置についての要件です。サービス類型ごとに、一定割合以上の介護福祉士等を配置することが求められます。具体的には、サービス提供体制強化加算、特定事業所加算などの届出をおこなう必要があり、訪問介護では特定事業所加算ⅠまたはⅡの届出が必須となっています。

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職場環境等要件の詳細

2025年度からの職場環境等要件は全部で6区分28項目あります。新加算Ⅰ・Ⅱを算定する場合は、6区分各2つ以上の項目(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)を満たし、実施した取り組みの内容を情報公表システム等で具体的に公表することが求められます。また、新加算Ⅲ・Ⅳを算定する場合は、6区分各1つ以上の項目(生産性向上は2つ以上)を満たす必要があります。

介護職員等処遇改善加算の職場環境等要件には、入職促進に向けた取り組み、生産性向上のための取り組みなど6つの区分があります。

6区分それぞれについて順番に説明すると、1つ目の「入職促進に向けた取り組み」には、幅広い採用の仕組みの構築や、研修のための制度構築などが含まれます。

2つ目の「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」では、働き方に関する定期的な相談の機会の確保や、エルダー・メンター制度の導入などが挙げられます。

3つ目の「両立支援・多様な働き方の推進」では、休業制度等の充実や、業務の属人化の解消など、柔軟な働き方に関する項目が中心となっています。

4つ目の「腰痛を含む心身の健康管理」には、職員相談窓口の設置等相談体制の充実や、事故・トラブルへの対応マニュアルの作成等の体制整備などが含まれます。

5つ目の「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取り組み」は、ICT機器の導入や職場環境の整備など、その名の通り業務の生産性アップに関する項目が中心となっています。

6つ目の「やりがい・働きがいの醸成」には、ケアの好事例等の情報を共有する機会の提供や、介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供などが挙げられます。主に、介護職員のモチベーション向上を目指した内容といえるでしょう。

なお、加算ⅠまたはⅡを取得する場合は、生産性向上の区分のうち、「生産性向上ガイドライン」に基づいた業務改善活動の体制構築と、現場の課題の見える化の実施の2つの対応が必須となるためご注意ください。

経過措置について

新加算の算定要件のなかには、年度内の対応を誓約することで加算要件を満たしたとみなされるものがあります。一本化当初、この経過措置期間は2025年3月末までの予定でしたが、さらなる加算取得の促進のため、2025年度にも引き続き経過措置がおこなわれることになりました。

具体的には、キャリアパス要件のⅠ〜Ⅲについて、年度内の誓約で加算要件をクリアできる経過措置が延長されます。(※キャリアパス要件Ⅳは、2025年度には年度内誓約の経過措置対象外となるためご注意ください。)

職業環境等要件も同様に猶予期間が設けられ、年度内の対応を誓約することで加算の要件を満たすとみなされます。さらに、厚生労働省の「介護人材確保・職場環境改善等事業」を申請している事業所は、職業環境等要件の適用が猶予されます。

新要件をすぐにクリアできない場合も、誓約を行ったうえで2026年3月末までに対応できるようにしましょう。

2025年度中に対応すべき要件一覧

以下の表は、2025年度中に対応すべき要件についてまとめたものです。

2025年度より介護職員等処遇改善加算Ⅰ~Ⅳを維持、または同加算に移行する場合は、経過措置の内容を確認したうえで必要な対応をおこなってください。

厚生労働省|令和6年度中に対応が必要な要件(早見表)「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」及び「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」をもとに作成(最終アクセス:2025年2月27日)

2024年度まで経過措置区分の加算Ⅴを取得していた事業所は、2025年3月末までに黄色の要件を満たす必要があります。また、2024年度内の対応を誓約して新加算を取得していた事業所は、2025年度末までに、緑色と青色の要件を満たすことが求められます。そして、2024年6月からの新要件で加算Ⅰ~Ⅳを取得している事業所も、2025年度末までに青色の要件を満たす必要があります。

繰り返しにはなりますが、上記の対応ができていないと、加算を受けられなくなってしまいます。2025年度中に、できるだけ早い対応を心がけましょう。

処遇改善加算の提出書類と期限

介護職員等処遇改善加算の算定にあたっては、事前に処遇改善計画書と介護給付費算定に係る体制等状況一覧表(体制届)などの提出が必要です。計画書は、加算を取得するすべての施設・事業所が毎年度提出するものです。体制届は、2025年度から新たに加算を取得する場合や、区分を変更して取得する場合に提出が必要です。また、算定後は実績報告書の提出が求められます。

2025年4月からの算定を希望する場合、それぞれの書類の提出期限については、以下の表の通りです。

処遇改善計画書

4月15日まで

※2025年4月、5月に算定開始したい場合

体制届

4月1日まで

※処遇改善計画書と同じく4月15日までとするなど、自治体判断で柔軟に対応

実績報告書

各事業年度における最終の加算の支払いがあった月の翌々月末日まで

なお、申請の事務負担を軽減させるため、2025年度から「介護職員等処遇改善加算」と「介護人材確保・職場環境改善等事業」の申請様式が一体化されています。ただし、加算の申請は指定権者へ提出し、補助金の申請は都道府県へ提出します。提出先が異なるので注意してください。

2025年度の申請にあたり対応すべきこと

加算Ⅴを取得していた場合

加算Vは経過措置が終了するため、2025年3月31日までに加算Ⅰ〜Ⅳへの移行が必要です。もし3月末までに移行できなければ、次年度以降は加算を受けられません。加算Ⅰ~Ⅳの算定に必要な要件をまだ満たしていない場合は、なるべく早く対応するようにしましょう。

2024年度中に年度内対応を誓約して加算Ⅰ~Ⅳを取得していた場合

キャリアパス要件Ⅰ~Ⅳや職場環境等要件など、対応の誓約によって2024年度に加算の届出をした事業所は、2025年4月以降、対応を誓約した要件をクリアできるようにしましょう。すぐに要件をクリアするのが難しい場合も、年度内の誓約をして2026年3月末までに要件を満たしましょう

2024年度中に新要件で加算Ⅰ~Ⅳを取得していた場合

2025年度より新たに適用となる月額賃金改善要件Ⅰの対応が必要です。職場環境等要件も2024年度とは一部異なるため、内容を見直し、必要に応じて対応をおこなってください。

2025年度から新たに加算取得をする場合

訪問介護における処遇改善加算の算定要件を満たす必要があります。訪問介護の加算区分と加算率を確認したうえで、必要に応じて対応してください。

最上位区分の取得を目指しませんか?

訪問介護における介護職員等処遇改善加算は、加算率が最大24.5%と他のサービスよりも高くなっています。2024年度介護報酬改定で基本報酬が引き下げられたいま、職員の離職防止はもちろん、人材獲得競争を勝ち抜くためにも、より上位の処遇改善加算を取得する必要があります。

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