【2026年度版】介護事業所の運営指導とは? 確認項目と事前準備を実務目線で解説
投稿日:2026.06.30
最終更新日:2026.06.30
ジョブメドレーアカデミー編集部
介護事業所の運営指導(旧・実地指導)は日々の備えが何より大切です。運営指導に落ち着いて対応できるよう、指導の基礎知識から当日確認される項目、指摘を受けやすいポイント、普段から整えておくべき記録まで、実践的な対策をわかりやすく解説します。

運営指導とは何か
運営指導とは介護施設・事業所が法令や基準に沿って適切に運営されているかを、都道府県または市(区)町村が確認・指導を行う仕組みです。サービスの質の確保と保険給付の適正化を目的としています。
介護施設等への指導には制度改正や介護報酬請求の取扱いなどを周知する集団指導もありますが、本記事では個別の施設・事業所を対象に行われる運営指導について解説します。
なお、障がい福祉分野にも運営指導があります。こちらは介護分野とは根拠制度が異なるため混同しないように注意してください。
運営指導で確認される主な観点
運営指導では次のような観点で確認されます。
- 介護サービスの質が確保されているか
- 利用者の自立支援や尊厳の保持に配慮されているか
- 人員基準・運営基準を満たしているか
- 介護報酬が適正に請求されているか
- 必要な記録や書類が整備されているか
後述する「運営指導で確認・指摘されやすい項目」では、介護事業所全般で見られやすい項目を整理します。
運営指導の実施頻度
原則として、指定または許可の有効期間内に1回以上行われます。居住系・施設系サービスでは3年に1回以上が望ましいとされています。
実際の頻度は自治体の方針、サービス種別、過去の指導履歴などによって変わります。通知を受けてから慌てるのではなく、日常的に記録や書類を整えておく姿勢が求められます。
実地指導・監査との違い
運営指導について調べると「実地指導」や「監査」という言葉も目にします。それぞれとの関係や位置づけの違いを理解しておきましょう。
実地指導は運営指導の旧名称
運営指導は2021年度まで「実地指導」と呼ばれていました。2022年度以降は指導の標準化・効率化や事業所側の文書作成負担軽減の観点から、名称や実施方法が見直されました。
指導は現在も原則として実地で行われますが、施設・設備や利用者のサービス利用状況以外の確認では、情報セキュリティの確保を前提にオンライン等を活用できる場合があります。
運営指導と監査の違い
運営指導と監査は目的も実施の性質も異なります。
項目 | 運営指導 | 監査 |
|---|---|---|
主な目的 | サービスの質の確保、運営基準の遵守状況や介護報酬請求の適正性の確認 | 基準違反、不正請求、高齢者虐待等の疑いがある場合の事実確認 |
実施の性質 | 助言・指導を基本とする | 立入検査等により事実関係を把握し、必要な措置を取るための調査 |
対象 | 介護施設・事業所 | 違反や不正等の疑いがある介護施設・事業所 |
結果 | 改善を要する事項があれば文書で通知され、報告を求められる | 勧告、命令、指定取消しなどの行政措置につながる場合がある |
運営指導が日常的な点検と改善支援であるのに対し、監査は問題発生時の調査と処分という位置づけです。
運営指導から監査へ、指摘事項を放置するリスク
運営指導の実施中に著しい基準違反、不正請求、高齢者虐待等が疑われる状況が確認された場合、運営指導を中止して監査に移行することがあります。
過度に構える必要はありませんが、指摘事項を放置すると介護報酬の返還や行政上の措置につながる可能性があります。日頃から基準の遵守や記録の整備を徹底し、指導時に運営状況を適切に説明できる体制を整えておくことが重要です。

【返還リスクに注意】
加算の算定要件を満たしていない場合、過誤調整や返還につながることがあります。訪問介護の特定事業所加算で起こりやすい返還事例は、以下の記事で確認できます。
運営指導の流れ
運営指導の流れは自治体やサービス種別によって異なりますが、一般的には次のように進みます。
①実施通知を受け取る
原則として、実施日のおおむね1か月以上前に文書で通知されます。通知には根拠規定や目的、日時・場所、指導担当者、事業所側の出席者、準備すべき書類、当日の進め方などが記載されています。
ただし、高齢者虐待が疑われるケースなど、事前に通知をすると日常のサービス提供状況を確認できないと判断される場合は、指導開始時に文書で通知されることもあります。
②事前に書類・記録を確認する
通知を受け取ったあとは指定された書類や記録を揃えます。運営規程、重要事項説明書、契約書、勤務表、資格証、サービス提供記録、加算算定根拠資料、研修記録などが対象です。通知文に記載された準備書類一覧や自治体が示す自己点検シートに沿って確認します。
③当日は書類確認・ヒアリング等が行われる
運営指導は面談形式で行われ、関係書類にもとづいて説明を求められます。書類確認だけでなく、管理者や担当職員へのヒアリング、必要に応じて施設・設備の現地確認が実施されます。
なお、実地での確認が不要な内容についてはオンラインなどで実施される場合もあります。
④結果通知・改善報告に対応する
運営指導の結果、改善が必要な事項や記録の不備、介護報酬請求に軽微な誤りが見つかると後日文書で通知を受けます。この場合、改善報告書などの文書による報告が求められます。指摘を受けたときは原因を確認し、具体的な改善策と再発防止策を整理して速やかに対応しましょう。
運営指導で確認・指摘されやすい項目
介護事業所全般で確認されやすい項目と、指摘につながりやすい例を整理します。
人員基準・勤務体制
人員基準、資格要件、勤務体制、兼務状況などが確認されます。とくに人員配置はサービス提供体制の基本です。勤務表、資格証、雇用契約書などの整合性を確認し、説明できる状態にしておきましょう。
指摘につながりやすい例
- 勤務表と実態が合っていない
- 必要な資格者や配置基準を満たしていることを確認できない
- 常勤換算や兼務状況の確認が不十分
運営規程・重要事項説明書・契約書
運営規程、重要事項説明書、契約書、利用者への説明・同意なども確認されます。介護報酬改定や基準改正が行われたあとは、書類の内容が古いままになっていることがあるので注意してください。
指摘につながりやすい例
- 制度改正後の内容が反映されていない
- 重要事項説明書と運営規程の内容に不整合がある
- 利用者への説明・同意の記録が確認できない
サービス提供記録・計画書
サービス提供記録、個別サービス計画、居宅サービス計画、モニタリング記録などはサービス提供の根拠となる重要なものです。各記録は「ある」だけでなく、内容が実態に合っているか、必要な説明や同意が確認できるかどうかも大切です。
指摘につながりやすい例
- 記録に記載漏れがある
- 計画書と実際のサービス内容にずれがある
- 利用者や家族への説明・同意の記録が不十分
加算算定に関する根拠資料
介護報酬の加算を算定している場合は、算定要件を満たしていることを示す記録も確認されます。計画、評価、会議録、研修記録など、加算ごとに根拠資料を整理しておくことが必要です。
加算は収益に直結する一方で、根拠資料が不足していると過誤調整につながるリスクがあります。算定開始時だけでなく、継続的に要件を満たしているかも確認してください。
指摘につながりやすい例
- 算定要件を満たす記録が残っていない
- 加算要件に関わる証跡が不足している
- 報酬改定後の要件変更に対応できていない
ジョブメドレー加算サポートでは、訪問介護の特定事業所加算について要件理解から取得可否の診断、書類準備、届出、取得後の維持までを支援しています。特定事業所加算の取得・維持に不安がある方はどうぞご相談ください。
事故・苦情・虐待防止・身体拘束等の適正化
事故報告、苦情対応、高齢者虐待防止、身体拘束等の適正化、感染症対策、業務継続計画なども確認されやすい項目です。
高齢者虐待防止や身体拘束等の適正化、業務継続計画については、必要な措置が講じられていない場合に減算対象となることがあります。研修の実施や委員会の開催、指針の策定など、求められる措置をすべて満たしておくことが重要です。
指摘につながりやすい例
- 事故・苦情対応の記録が不十分
- 虐待防止や身体拘束等の適正化に関する研修実施状況や受講記録が確認できない
- 委員会の開催や指針の整備・周知状況が確認できない
- 業務継続計画の策定・見直し、研修・訓練の実施記録が確認できない
法定研修の実施状況・受講記録
介護保険法に基づく運営基準で実施が求められる研修については、実施状況や受講記録が確認される場合があります。複数拠点や職員数の多い事業所では、各職員の研修受講履歴を記録・管理する仕組みを整えておくと、運営指導への備えになります。
指摘につながりやすい例
- 誰が、いつ、どの研修を受けたかを確認できない
- 欠席者へのフォロー記録が残っていない
- 研修資料、実施日、参加者、内容などが整理されていない
運営指導に備えて日頃から準備すべきこと
運営指導への備えは通知が届いてから始めるものではありません。日頃から運営状況を確認し、書類や記録を整えておくことで、指導の当日も落ち着いて対応できます。
自治体通知や自己点検シートを確認する
運営指導の準備では指定権者の自治体が示す通知、自己点検シート、準備書類一覧を確認しましょう。サービス種別や自治体の運用によって使用する様式、確認項目、提出期限が異なる場合があります。
厚生労働省が公開している運営指導マニュアルや確認文書・確認項目一覧、各種加算等の自己点検シートも参考になります。ただし、実際に提出・準備する資料は自治体の案内に従う必要があります。
自己点検シートは運営指導の直前だけでなく、日頃の内部チェックにも活用できます。定期的に確認することで書類の更新漏れや記録の不足に気づきやすくなります。
書類・記録をすぐ提示できる状態にしておく
書類や記録は必要なときにすぐに確認・提示できる状態にしておくことが求められます。紙で保管する場合もデータで管理する場合も保管場所、担当者、更新タイミングを決めておきましょう。契約書、重要事項説明書、運営規程、勤務表、資格証、サービス提供記録、計画書、苦情・事故記録、加算算定に関する根拠資料などは定期的に整合性を確認しておくと安心です。
法定研修は計画的実施と記録の保管を徹底する
高齢者虐待防止、身体拘束等の適正化、感染症対策、業務継続計画など、運営基準で実施が義務づけられている研修は年間計画に沿って管理しましょう。研修の実施日、対象者、受講者、内容、使用資料、欠席者へのフォロー状況を記録しておくと、あとから確認する際にも役立ちます。
報酬改定・制度改正後は変更点を重点的に確認する
報酬改定や制度改正後は加算要件、減算要件、研修・委員会・指針に関する基準が変わっている場合があります。最新の厚生労働省資料や自治体通知を確認し、運営規定、重要事項説明書、記録様式、研修計画などに反映しましょう。
とくに注意すべきなのが加算の算定要件です。運営指導では運用の実態が細かく確認されるため、要件を正しく理解していないと加算取得後に過誤が判明することがあります。要件の変更に気づかず運営指導で過誤請求が認められた場合は自主返還が求められる可能性があるため、算定要件を曖昧なまま運用しないことが大切です。
改善指摘を受けた場合の対応ルールを決めておく
運営指導で改善事項が示された場合に備え、誰が内容を確認し、いつまでに改善し、どのように報告するかを決めておきましょう。指摘事項を個人対応にせず、事業所全体の運営改善につなげる視点が求められます。
改善報告書を提出する際は指摘内容、改善内容、実施時期、再発防止策を整理し、同じ不備を繰り返さないようにする必要があります。
まとめ|運営指導は日頃からの記録・管理が重要
介護施設・事業所の運営指導は、サービスの質の確保や保険給付の適正化を目的に行われます。基本的には事業所の課題を共に確認し改善を促すものですが、著しい基準違反や不正請求、高齢者虐待等が疑われる場合は監査に移行することもあります。
通知を受けてから慌てないためには、日頃から書類や記録を整え、自己点検を習慣化することが重要です。とくに加算の算定要件は正確に理解し、運用の実態と記録が整合するよう管理しておきましょう。運営指導への備えは適切な事業運営そのものです。日々の積み重ねが指導当日の安心につながります。
ジョブメドレーアカデミーでは法定研修の実施・管理をサポートしています。高齢者虐待防止、身体拘束等の適正化、業務継続計画など、運営指導で確認される研修の実施記録や受講履歴を効率的に管理できます。
また、介護職員等処遇改善加算や特定事業所加算の取得に必要な職員の資質向上のための研修も取り揃えています。研修管理の負担を軽減し、運営指導に自信を持って臨みたい方はぜひご相談ください。
受付時間 9:30 〜 18:00(平日)
参考
・厚生労働省|介護保険施設等運営指導マニュアル
・厚生労働省|介護保険制度等における指導監督
・厚生労働省|介護保険最新情報Vol.1345 高齢者虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算の取扱いに係るQ&Aの周知について
(最終アクセス:2026年6月29日)




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